当院における女性医師の復職後のキャリア支援体制
広島市立北部医療センター安佐市民病院 消化器内科¹、内視鏡内科²山﨑 祥子¹、鴫田 賢次郎²、朝山 直樹¹、永田 信二¹
厚生労働省の統計で2022年の女性医師数は初めて8万人を超え、2020年と比較して4.6%増加しています。とくに若い世代ほど女性比率は高く、29歳以下では36.2%を占め、さらに、国公私立大学の医学部医学科に入学した女性の割合は、2023年度で40.4%となっています。このように女性医師の割合は今後も徐々に増加していくことが予測されています。一方、20代後半から30代前半の出産・子育ての世代の女性の労働力率が下がる様を表した「M字カーブ」は、近年の女性の社会進出の推進や仕事と家庭の両立支援策の向上などを背景に他業種では解消してきているとされますが、女性医師の場合は、今なお出産や育児などのライフイベントをきかっけに、いったん仕事を離れるM字カーブの傾向が残っています。
一方、20代後半から30代前半の出産・子育ての世代の女性の労働力率が下がる様を表した「M字カーブ」は、近年の女性の社会進出の推進や仕事と家庭の両立支援策の向上などを背景に他業種では解消してきているとされますが、女性医師の場合は、今なお出産や育児などのライフイベントをきかっけに、いったん仕事を離れるM字カーブの傾向が残っています。しかも、妊娠出産や育児などで通常の勤務形態から離れた女性医師の復職先が中核病院や専門施設となっているケースは少なく、勤務形態やキャリアアップに関する支援が十分であるとは言えません。このような状況は、女性医師のキャリア形成に対する問題点であり、また、女性医師の割合が増えている現況を考えれば、医師不足を解消するための重要な課題とされています。
当院内視鏡センターは消化管専門医6名、肝胆膵専門医4名、後期専攻医2名が在籍し、年間約12,000件程度の内視鏡検査・治療を行う地域の中核病院ですが、前述の女性医師に関する課題に対応しようと2022年より女性医師の復職後のキャリア支援を推進しています。今回はその診療体制の詳細とそこで実際に勤務した感想について報告させていただきます。
当院における女性医師の復職後キャリア支援についてですが、個人によって仕事に対する価値観や子供の年齢や人数、家庭環境が異なり、またこれまでの就業経験年数や習得技術に差があるため、勤務時間や業務内容などは希望に合わせて個別にプランを作成できるようになっています。
まず、勤務時間については、保育園の送迎に合わせられるようフレックスタイム制となっており、時短や遅出など個人の希望に合わせて対応・変更可能です。また、当院は託児所があり、比較的長く働きたいという希望にも対応可能となっています。
広島大学の医局の協力のもと、2022年4月よりA医師が10時〜15時の時間帯で週2日勤務を開始しました。その後、2023年4月よりB医師が9時〜16時の時間帯で週5日、C医師が9時30分〜16時の時間帯で週3日勤務を開始し、さらに2024年4月よりD医師が9時〜15時の時間帯で週3日勤務を開始しました(現在A医師は育休中で、復帰調整中、C医師は産休中です)。それぞれの医師の希望に合わせて勤務日数や勤務時間を決めているため、このように勤務条件は様々です。
また、子供の病気などで急な欠勤が必要になった場合も、内視鏡医が複数名いるため対応してもらえることは私達にとって働きやすい要因のひとつです。とはいえ、初めて急な欠勤をとる際には少し申し訳なく思いましたが、以前より主任部長が,「家庭と仕事は車の両輪のようなものだから、家庭が大変な時には仕事は無理をしなくていい。仕事はみんなでやるから大丈夫」とよく言われていたそうで、急な欠勤もみんなでカバーするということが内視鏡センターでの共通認識として根付いていたことが、女性医師の働き方をそれほど抵抗なく受け入れられた要因のひとつではないかと感じました。現在勤務している女性医師は、全員定時で帰宅可能な体制で勤務できており、急な欠勤や早退、休暇についても全員希望通り100%取得できています。
次に、業務内容については一般内視鏡検査が基本業務ですが、いつでも内視鏡スタッフの助言やサポートが受けられる体制となっており、精査内視鏡や内視鏡治療などの専門的技能も習得可能です。内視鏡中に判断に悩む場合も上級医にすぐに検査室まで来てもらえるシステムや、検査後に所見を教えてもらったりフィードバックしてもらえる環境はとても安心ですし、自分には縁がないだろうと半ばあきらめていた拡大内視鏡精査やEMRやESDなどの治療を一から教えてもらいながら成長できることは嬉しい限りです。時短勤務のため病院で働く時間が限られており、現場で学ぶ時間が少なくなりますが、その分、若手の専攻医が指導を受けている音声入りビデオでEMRやESDの基礎を学べるようにしていたり、Zoom勉強会の開催や、参加できなかった勉強会動画をYouTubeにアップして視聴できるようにしているなど、場所や時間に限定されない教育ツールが導入されているのはとてもありがたく思いました。実際、内視鏡治療に関しては、2024年3月までに、大腸EMRはA医師83例 (21か月)、B医師70例 (12か月)、C医師34例 (12か月)施行し、胃ESDはA医師12例、B医師2例、C医師1例施行しています。
今回、女性医師の働き方に関して女性医師側と内視鏡センター側の両方に対してアンケート調査を行ったところ、女性医師側は上記の理由で「働きやすさ」や「やりがい」を感じている一方、内視鏡センター側からは、「内視鏡技術が向上し、センターを支える大きな戦力になっている」「女性医師勤務により実質的に医師増員となり、内視鏡検査の終了時刻が短縮された」という意見があり、女性医師を受け入れる病院側もメリットを感じてくれていたことは、とても嬉しい結果であると同時に、復職後のキャリア支援体制の有用性を示唆するものだと感じました。
中核病院や専門施設が女性医師の復職後のキャリア支援を積極的に行うことは、復職した医師の技術が向上し、育児などが落ち着いた後の働き方の幅が広がるだけでなく、長期的にみると、受け入れる病院ではスタッフの負担が軽減され、その地域においては実働医師数の増加により質の高い医療提供につながると考えます。今後、当センターのような体制が中国支部全体に広がり、活躍できる女性医師が増えていくことを願っています。
最後になりますが、このような体制を構築してくださった北部医療センター安佐市民病院の永田先生と内視鏡センターのみなさま、配属に際して多大な配慮をいただきました広島大学消化器内科の岡教授に御礼申し上げます。
広島市立北部医療センター安佐市民病院内視鏡センター

